漢字で書くときっと油香

「いっけなーい☆ 遅刻遅刻ぅ!」

 

今にも学校へ遅刻しそうなアタシはこの春に高校生になったばかりの15歳!名前はユカ!ちょっぴりドジだけど元気だけが取り得のフツーの女の子!でも、他のコと違うところと言えば、なんといっても石油王ってとこカナ~~。

 

ドンッ!

 

「いったぁ~~い、何すんのよ!」

「ご、ごめん、前をよく見てなかったから……」

 

トクンッ。そのとき胸が高鳴った。彼の顔立ち。声。服装。表情。雰囲気。全てがアタシの理想通りで、アタシはカレに見惚れてしまった。

しかしカレは「急いでいるから何かあったらここへ連絡してくれ」と名刺を置いて走り去っていく。アタシはハッとして名刺を見た。名前はりんひらというらしい。なんて凛としてひらっとした名前。

――カレに貢がなきゃ。アタシの石油王としての本能がそう囁いた――

 

 

みたいな出来事がなんでないのか考えているうちに夜になる毎日。夜ってなんでくるんだ。いや、夜および深夜は割と好きな時間帯だからいいんだ。むしろ朝だ。なんで朝って来るんだろうか。

色んな創作物で、不幸のドン底にいる人間に「明けない夜はないんだぜ」なんて励まし方してたりするけど、なんで夜の方が悪いイメージを持たれているんだ。夜は最高でしょ。何せ寝られる。最高。そして無理して夜更かしをすればちょっぴり特別な日のようなドキドキ感も味わえる。最高。それなのに朝と言ったらなんだね。来るだけで憂鬱。苦痛な一日の始まり。早く時が過ぎて夜になれと願い続ける時間。何が新しい朝だね、希望の朝だね。ずっと今晩の気持ちでいたい。時よ止まれ。お前は美しい。