メモ帳のjunk
「……客さ……お客さん……もうそろそろ着きますよ」
「ん……」
「起きましたか。ずいぶんお疲れみたいですね」
「……アンタは?」
「死神です」
「死神」
「はい」
「それじゃここは」
「ここは三途の川」
「三途の川」
「はい」
「という事は、俺は死んだのか」
「そうですね。でも、覚悟はしてらしたんでしょう?」
「……まあな」
「言ってましたもんね。『勇者よ、ここは俺に任せて先に行け!』とか『たとえこの身が砕けようとお前たちを通しはしない!』とか」
「改めて言われると恥ずかしいから止めてくれ」
「イヤ、すみません。でもカッコよかったですよ。最期には自爆して道を塞ぐなんていい死に様じゃないですか」
「死に様を死神に褒められても嬉しくはないな」
「ハハハ。しかしアレですね。お客さんも報われませんね」
「何が?」
「勇者たち、全滅しましたよ」
「……」
「もうね、あっさり。3ターンくらいで。魔王も2ターン目までは様子見してたんですけど、3ターン目に全体魔法を使ったらパーティ壊滅。たぶんお客さんを渡し終えて戻ったら勇者さんと魔法使いさんが順番待ちしてるんじゃないですかね」
「勇者と魔法使い……僧侶は?」
「ああ、僧侶さん。彼女は生きてるみたいですよ」
「生きてるのか!」
「ええ。ただまあ、魔王城の牢屋に閉じ込められてますけどね」
「……」
「あ、その表情。お客さん、もしかして彼女に惚れてました?」
「……」
「分かりますよ。外見も魂もキレイですからね。できれば魂は汚さずに死んでほしいけど、牢の中で魔物に何をされてるか想像すると難しいだろうなァ」
「……」
「ま、死神の私が言うのもなんですけど、すぐには死なないでしょうし、その間に他の勇者が助けにくるかもしれないし、生きていれば希望はあるんじゃないですか」
「……じゃあ、死んだ俺にはもうないんだな」
「あ、着きますよ」